ふたつきとんでしがつだよ
懐かしい人が夢に出てきた。
私は何故か地面に膝をついて、右手はその人の左腕にしがみついてへらへらと笑っていた。
彼はそんな私を見て置いていく素振りを見せつつもその腕を振り払うことなく「はっきり言いなよ」とだけ言ったので私は彼の目を見つめながら「そこにいて」とだけ言葉を返した。
どれだけ必死だったのか、本当に声に出したのか、「そこにいて」と言い放った次の瞬間に夢から醒めた。
夢の中の彼があまりにも現実に近く、いかにもな振る舞いをしてみせたのは私がそれだけ彼のことを見ていたからなのだろうか。そうだとしたら少しというかだいぶ恥ずかしいし未練がましいから早くどうにかなってほしい。
そういえば酒に酔ってその人の膝の上で帰るなと泣き喚いてからもうそろそろ一年経つ。
禊の時期なんかな。
"春の夜の夢"が目覚め難いが醒めてしまえば儚く頼りないものとして詠まれる意味が分かっちゃったな。